呑んべんだらり

三度の飯と酒が好き

自転車で赤切符を切られた

私の就業先は自宅から徒歩圏内にある。 通勤はもちろん、昼休みにも自宅に帰り、ご飯を食べた後に軽く昼寝をするのがルーティーンだった。 しかし、徒歩圏内とは言え通勤時間は15分。昼休みは1時間なので、行き帰りだけで半分を消費してしまう。 それは勿体ないな~と思ったので昼休みの帰宅を諦め、会社で食事を取っていた時期もあった。使用していなければ会議室で食事を取ることも出来るが、フロアが違うので移動が面倒臭いのでデスクで昼食を取り、午後眠くならないように少し昼寝をする。 しかし私の会社にはデスクで食事を取る人はいるが、デスクで昼寝をしている人はいない。デスクで堂々と眠っている私はかなり悪目立ちしていたようで、よっぽど疲れているんじゃないかとか体調が悪いんじゃないかと心配する声が出たらしい。 (ちょうど部署内でのチーム異動があり、新しい仕事+仕事量の増加があるタイミングだった) そこから昼休みを会社で取る際は会議室を使う事、その際は私専用の「使用中」札をドアに下げる事を総務から言い渡され、私の苗字が記載された札を賜った。

その時の心境を正直に言うと、

「絶対この札使いたくねえ~~~~~~~~……」

だった。

よって会社で昼休みを取ることは諦め、やはり自宅へ帰る事に。 であれば、少しでも家で過ごす時間を延ばすために自転車を購入すれば良いのでは? そう思いついた私は、早速自転車を購入した。 うちのマンションは駐輪場の代金が相場の3倍くらいするのだが、まあ買い物にも便利だし。

そんな訳で自転車を購入し、楽しい昼休みライフをようやく送れるようになったのだが、8月某日に悲劇は起きた。

その日も私は昼休みを満喫すべく、会社から自宅へと自転車を走らせていた。 車道を運転していたのだが、信号が赤になってしまう。 しかし歩道に乗り上げれば、歩道の信号は青だったのでそのまま進める。 そう考えた私は、赤信号で止まるべきラインを超えて歩道に乗り上げた。 そうして3mほど走った後、「お姉さんお姉さん!」と誰かに呼び止められる。 何だろうと思って振り向くと、なんと声の主は警察官。その瞬間、さっきの赤信号無視か……と全てを悟る。 それでもこの時は、まさか赤切符まで切られるとは思わず、せいぜい注意で済むだろうとタカを括っていたのだ。 しかしその後、もう1人の警察官が追加され、あろうことか付近に停車してあったパトカーの中に入るように指示されてしまったのだ。 人生初のパトカー乗車である。救急車にも乗ったこと無いのに!

そしてパトカーの中で、状況説明というか取り調べをされた。 応対してくれた警察官の方は2人とも優しい口調だったので恐怖は無かったが、これ昼休み中に終わるんか?と変な心配をしていた。 私が運転免許を持っていない事を知ると、「自転車で車道を走っている時は、車道の赤信号を守らなければならない事を知らなかったですか?」と聞かれたが、流石にここで「知りませんでしたぁ」とシラを切っても嘘くさいと思い、正直に知っていたと答える。 その他にもいくつか質問をされ、私の供述内容や場所・日時などを書き込んだ紙を渡される。

「交通執行課に出頭していただき、そこで起訴になれば罰金を払っていただく事になります。」

出頭、という言葉に動揺しまくる私。 しかも出頭は平日の15時までにしなければならない為、有休を使わなければならない。 これはえらい事になったなと遅まきながら思い知る。 出頭予定の日時を伝え、そこでようやく解放された。ぎりぎり昼休み内で収まった。

そんな訳で、私は先日錦糸町にある警視庁の墨田分室に「出頭」してきたのである。 午後に休みを取り、会社から錦糸町へ向かう。 錦糸町からは歩いて5分ちょいなので迷わずに到着。 受付で赤切符を見せると、おじさんが受付番号がかかれた受付票をくれたのだが、そこには今後の流れを説明したマニュアルのようなものがホチキス止めしてあった。 それによると、警察の取り調べ→検察の取り調べ→略式裁判→罰金納付となっており、罰金を払う前提のような話になっていたので慄く。 ネットで事前に調べた情報では、自転車での交通違反は初犯ならよっぽど悪質でない限り不起訴になるとあったのに……

もうどうにでもな~れという気持ちで待機していると、10分も待たずに警察取調べ室に呼ばれた。 この警察の方も、取締りの際の方々と同じく優しい態度で接してくれて、「素直に話して下さって素晴らしいですね!」「昼休みだからちょっと急いでしまったんですよね」とこちらに寄り添うような言葉までかけてくれた。 目尻に笑い皺を浮かべながら私の供述内容をPCに打ち込んでいく様子を、こんなに親切なのは裏があるんじゃないか、実は私の事をめちゃくちゃ悪く書いてたら人間不信になっちまうよ、などと被害妄想を繰り広げながら待つ。

次は検察取調べ室へ向かって下さいと言われ、1Fの警察取調べ室から2Fへ移動し、更に待機。 こちらもすぐに呼び出され、穏やかなそうなおじいちゃんと対面。 警察に話した内容はあっているか確認され、それを認めると「じゃあ今日は罰金等は特に課しませんのでこのままお帰りになってもらって結構です」とサラッと言われる。 多分対面してから2分くらいしか経っていない。 あまりにあっさりしているのでちょっと呆けていたら、「もし次に赤切符切られちゃうと、罰金と講習が確定だから気を付けてね」と言われる。 そしてもう危険運転はしませんという誓約書にサインをし、墨田分室を後にした。

やはり自転車で初犯なら、大体は不起訴扱いになるようだ。 受付から退出まで30分ちょっとぐらいで、あっけないくらいあっと言う間に終わった。

免許制でもなく講習も無しに乗れる乗り物で、罰則だけ厳しいのはどうなんだと思うところも正直あるが、自分が歩行者の時に最近自転車の危険運転が多くなってきたなとも思うので、お互いが気持ちよく過ごせるようルールを守って過ごさなければなと肝に命じた出来事だった。

自転車はもう乗りたくないので売りました。